
ナイキの厚底シューズを世界陸連が禁止するというニュースをイギリスメディアが報じています。ここでは、ナイキの厚底シューズを世界陸連が禁止かどうか検討必要になった背景であるマラソン界や箱根駅伝の実状、最新のイギリスメディアの報道内容を紹介しています。
目次
ナイキの厚底シューズを世界陸連が禁止?その革新的技術とは?

従来のレースシューズは「薄くて軽い」が常識でした。
一方でナイキが登場させた厚底シューズは、ソールの最も厚い部分は約4cmありますが、重量は約198gと軽いのが特徴です。そのなかにはバネのような役割を果たすカーボンファイバー製プレートが、柔らかいフォーム(クッション材)に挟まれています。
何が凄いのかというと、カーボンファイバー製プレートの形状が復元するパワーと、反発性の高いフォームを推進力に生かすことで、ラクに速く走れるようになったのです。
さらに脚へのダメージが少なくなったため、マラソン終盤のペースダウンも小さくなりました。
ナイキの厚底シューズを世界陸連が禁止?箱根駅伝で区間新連発?
2020年の箱根駅伝は、初日の往路が始まった直後から、箱根駅伝を伝えるネットや新聞の記事の大半が「ナイキの厚底シューズ」でした。
ピンクと、左右非対称(右・水色、左・オレンジ)の新カラーのナイキの厚底シューズが令和初の箱根路を席巻しました。
多くの区間で、ナイキの厚底シューズでの快走が目立ち、往路4区間、復路3区間の計7区間で新記録が誕生しました。
晴天で風も吹かず、気象条件が良かったことも一因ですが、青学大をはじめ、ピンクやオレンジ、グリーンのナイキ社製の厚底シューズを履く選手が目立ちました。
アディダスのサポートを受けていた青山学院でさえ、全員がナイキの厚底シューズを履いて走ったのです。
青山学院大学は、大会記録を6分46秒上回る10時間45分23秒で総合優勝しました。
2位の東海大も従来の最高記録を上回る、超高速の箱根駅伝でした。
カーボンファイバーを使用し、高反発をうたう、ナイキの厚底シューズは世界を席巻しています。
その波は箱根駅伝でも続き、今大会の区間賞10人のうち9人が、ナイキの厚底シューズを履いていたのです。
ナイキの厚底シューズを世界陸連が禁止?箱根駅伝のシューズシェアの推移とは?
2018年 箱根駅伝のシューズシェア
ナイキ 27.6% ミズノ17.6% ニューバランス12.4% アシックス25.7% アディダス16.7%
2019年 箱根駅伝のシューズシェア
ナイキ 41.3% ミズノ10.4% ニューバランス4% アシックス22.2% アディダス17.0%%
2020年 箱根駅伝のシューズシェア
ナイキ 84.7% ミズノ4% ニューバランス4% アシックス3% アディダス3%
2020年大会は210人中178人(84.7%)がナイキの厚底シューズを履いて出走しました。箱根駅伝ランナーにおけるナイキのシェア率は前々回が27.6%で前回が41.3%。今回はさらに倍増したことになります。
ミズノが4%、ニューバランス4%、アシックス3%、アディダス3%と比べれば、ナイキの厚底シューズのシェア率は驚異的です。
ナイキの厚底シューズを世界陸連が禁止?日本のマラソン選手の傾向は?
ナイキは「厚さは速さだ」をキャッチコピーに概念を打ち破る厚底シューズを開発しました。
厚底にカーボンプレートが内蔵され、反発力が推進力を生みます。
2018年に第2弾、2019に第3弾のナイキの厚底シューズが誕生しました。
マラソン世界記録を演出したナイキの厚底シューズは、日本人選手のタイムも大幅に短縮しました。
2018年2月の東京で、設楽選手が16年ぶりに日本記録を塗り替える2時間6分11秒で走りました。
2018年10月のシカゴでは、大迫選手が設楽選手の記録を21秒更新する2時間5分50秒をマークしました。
ふたりともナイキの厚底シューズへの信頼は厚く、「いいシューズを選び、効率よく練習すれば結果はついてくる」と設楽選手が語れば、大迫選手も「僕のマラソンは『ズーム ヴェイパーフライ 4%』とともにあります。このシューズに支えられて一緒にきたという感じがある」と話すほどです。
2019年9月15日、東京で、マラソングランドチャンピオンシップが開催されました。
この東京五輪代表選考会「マラソングランドチャンピオンシップ」(MGC)では、中村匠吾選手、服部勇馬選手、大迫傑選手の3トップをはじめ男子の上位選手10中8人が、ナイキの厚底シューズで走りました。
今までは、マラソンといえばアシックスというイメージがありました。
森下広一さん、有森裕子さん、高橋尚子さん、野口みずきさんと、オリンピックでメダルを獲得した日本人選手は全員がアシックスを履いていたからです。
しかし、ここ数年は状況がまったく異なります。
ナイキの厚底シューズを世界陸連が禁止?海外のマラソン選手の傾向は?
2016年リオ五輪のマラソンで、ナイキの契約選手たちが後に発売される「ズーム ヴェイパーフライ 4%」のプロトタイプを履いて走り、男女合わせて6つのメダルを独占しました。
2017年以降は、世界のメジャーレースで、ナイキの厚底シューズは猛威を振るっています。
2019年3月の東京マラソンでは上位5位までが、ナイキの厚底シューズを履いていました。
リオ五輪で金メダルに輝いたエリウド・キプチョゲ(ケニア)の記録は大変なことになっています。
2017年5月に行われた『BREAKING2』という非公認レースをナイキの厚底シューズで走り、42・195kmを2時間0分25秒で走破しました。
2018年9月のベルリンマラソンでは、世界記録を1分18秒も短縮する2時間1分39秒という信じられないタイムをナイキの厚底シューズで打ち立てました。
ナイキはさらに“独走”を狙い、既に次世代モデルの厚底シューズを完成しました。
マラソン世界記録(2時間1分39秒)保持者のキプチョゲ選手は、2019年10月には、非公認レースで1時間59分40秒の驚異的タイムをたたき出した時に履いた「超厚底シューズ」です。
ナイキの超厚底シューズでは、前足部にナイキの特徴のエアが内蔵されました。
「このシューズを履ける選手は現時点でキプチョゲだけ。次に東京五輪前に五輪選手だけに供給する。五輪後にそれ以外のエリートランナーに供給する予定」とナイキ関係者は戦略を明かしているそうです。
ナイキの厚底シューズを世界陸連が禁止?世界陸連イギリスメディアの報道とは?
用具の進化で連想されるのは、2008年北京五輪時の高速水着問題でしょう。
英スピード社の「レーザー・レーサー」を着た選手が世界記録を連発しました。
その後、この水着は禁止されました。
陸上界でも、ナイキの厚底シューズに対し、世界陸連が調査を始めました。
注目の“厚底シューズ”をめぐり騒動が発生しています
イギリスメディアがこの“魔法の靴”について、世界陸連が使用を禁止する見通しだと、一斉に報じたのです。
世界陸連が、競技用シューズの底の厚さとカーボンファイバー製ソールの使用を制限する新規則を設けるというのです。
新規則が定められた場合、「ナイキ(NIKE)」の厚底シューズのヴェイパーフライシリーズも使用が禁止される見通しです。
こう聞くと、ナイキの厚底シューズを履いて参加したこれまでの競技の記録は取り消しになってしまうのかという疑問も出てきますが、取り消しにはならないという報道もあります。
そんな中、ナイキの厚底シューズが履かれなくなるのではとの見方もあり、競合するアシックスの株価が一時上がる現象まで起きています。
海外メディアが報じた新規則ではこのほか、短距離用に改善されたスパイクの着用も禁止するという報道もあります。
ナイキの厚底シューズが使用禁止になる方向性を伝えたのは、英国の「テレグラフ」、「タイムズ」、「デイリーメール」、専門メディアの「ランナーズ・ワールド」などです。
テレグラフ紙は、「スクープ」だと強調して「キプチョゲは、ナイキ・ヴェイパーフライはフェアなものと主張するが、世界陸連は使用禁止へ着手」との見出しを取って、世界陸連が、同シューズの調査の専門委員会を招集、まもなくプロの競技会での同シューズの使用禁止を発表すると報じました。
同記事は、昨年10月のシカゴマラソンでブリジット・コスゲイ(ケニア)が厚底でカーボンプレートが組み込まれた「ヴェイパーフライ・ネクスト%」のシューズを使用して2時間14分4秒の女子マラソン世界記録をマークし、ポーラ・ラドクリフの持っていた世界記録を16年ぶりに更新したことに注目しています。
「研究ではこれらのシューズがその他のレース用シューズに比べて走力効率で4%のアップが見込まれることが分かっている」と断言しました。
また世界記録保持者のキプチョゲが、厚底シューズを履いて、2時間切りに挑戦する非公式レースで人類として初めて2時間を切る1時間59分40秒(非公認記録)をマークしているが、これについても「調査委員会は、キプチョゲが履いたナイキ最新のヴェイパーフライとなるアルファフライのプロトタイプ版では、その効力が倍増している可能性があると指摘している」と断じています。
一方で、英紙「ガーディアン」(電子版)は「ナイキシューズは禁止されそうにない」と報じ、他の英メディアと反対の見方を示しました。
同紙によると、規制については審議中だとした上で「ミッドソールのサイズに制限を付け加える」としています。
2020年1月末に、厚底シューズが禁止されるかどうかの結論が出ると思われます。
東京オリンピックの結果も左右する、重要な決定になるでしょう!
まとめ:ナイキの厚底シューズは禁止?世界陸連の結論やオリンピックの影響は?

ナイキの厚底シューズがマラソン界を席捲しています。
そんな中、突如ナイキの2020厚底シューズを世界陸連が禁止するというニュースをイギリスメディアが報じました。
ここでは、ナイキの厚底シューズを世界陸連が禁止かなぜ検討必要になったのか?
その背景になるマラソン界や箱根駅伝の実状や最新のイギリスメディアの報道内容を紹介しました。
はたして、東京オリンピックを前にどのような結論を世界陸連はだすのでしょうか?
それにしても東京オリンピックのマラソンは、マラソンコースの変更、そしてシューズ騒動と激動ですね。
東京オリンピックのマラソン選手は、あの色違いやピンクのナイキの魔法の靴をはけるのでしょうか?