武田薬品 シャイアー買収へ! 株価の動向はどうなる? 

武田薬品のシャイアー買収は、製薬業界にとっても激震で、株価も大きく動きました。武田薬品の製薬会社における位置付け、シャイアーを買収することにより考えられるメリットとデメリット、そして株価の動向などを考察していきます。

武田薬品の製薬会社における位置付けは?

カレンダー上で話をする二人のビジネスマン

最近、メディアを騒がせている武田薬品は、1781年に「薬の町」として知られる道修町(大阪市中央区)で創業しました。売上高の約9割を医療用医薬品売上が占め、消化性潰瘍治療薬、制癌剤等の主力製品を持っています。

かっては、 武田薬品は、農業、ウレタン樹脂、動物用医薬品、調味料およびビタミン・バルg九といった非医薬品事業も手がけていましたが、これらは2000年から2007年にかけて、それぞれ、住友化学、三井化学、シェリング・プラウ、キリンビールおよびBASFとの各合弁会社に順次移管しました。

武田薬品は、日本の医薬品企業(製薬メーカー)での売上高は1位であり、世界の医薬品企業の売上高順位(2017年)では19位です。アステラス製薬、第一三共、大塚ホールディングス、エーザイと共に国内5大医薬品メーカーのひとつです。

以下、Answers Newsが集計した世界の売上高のランキングです。

製薬会社 世界の売上高トップテン (2017年)

社名    単位:億ドル

1.ロシュ      543.65

2.ファイザー    525.46

3.ノバルティス491.09

4.メルク      401.22

5.サノフィ     396.12

6.GSK       389.40

7.J&J        362.56

8.アッヴィ     282.16

9.ギリアド     261.07

10.イーライリリー  228.71

日本の製薬会社では、武田薬品工業が19位(15,757)、24位にアステラス製薬、25位大塚ホールディングス(大塚製薬)と続きます。

武田薬品のシャイアー買収に世界が驚く!

武田薬品のシャイアー買収という世紀のM&A(企業の合併・買収)が、大詰めを迎えています。

武田薬品は2018年5月8日、アイルランド製薬大手のシャイアーを総額460億ポンド(約6兆8000億円)で買収することで合意しました。

武田薬品のシャイアー買収は、シャイアーの抱える有利子負債(1兆5000億円)を加えると、8兆3000億円規模の大きな買収になります。

武田薬品によるシャイアー買収が実現すれば、日本企業による過去最大のM&A(買収・合併)です。

今までの日本最大買収はソフトバンクグループの英半導体設計、アーム・ホールディングス(3兆3000億円)ですので、武田薬品のシャイアー買収は、買収額だけで比較しても2倍以上となります。

また、武田薬品のシャイアー買収は、大型買収が相次ぐ製薬業界にあっても、2014年の米アクタビスによる旧アラガンの買収(約660億ドル)以来の大型案件となります。

武田薬品のシャイアー買収による経営状況は?

当時、無借金経営だった武田薬品は、2011年にスイスのナイコメッドを1兆1000億円で傘下に収めるなど大型M&Aを繰り返し、17年末時点の有利子負債は1兆1000億円に上ります。

武田薬品はシャイアーの買収で新たに3兆円規模の借金を抱え、3兆円を銀行から借り入れれば、有利子負債は4兆円規模に膨らみます。巨額な借り入れと大型増資の懸念から武田薬品の株価は下がり続けました。

2018年4月25日、武田薬品の株価は、一時4398円(前日比453円、9%安)と急落、年初来安値を更新しました。

2018年1月10日の武田薬品の株価6693円から35%安となり、「小が大を飲む大博打」となる交渉が明らかになった後から計算しても2割減となります。

それでは、武田薬品にとっての、このシャイアー買収のメリットはなんなのでしょうか?

武田薬品のシャイアー買収のメリットとは?

武田薬品がシャイアー買収の背景には、1999年に糖尿病治療薬「アクトス」を発表して以降、自社開発の大型新薬が出ていないことがあります。

武田薬品の狙いは、シャイアーが持つ研究開発品(新薬候補)の取り込みです。

武田薬品は、今後数年は市場投入済みの潰瘍性大腸炎治療薬「エンティビオ」など有力新薬で何とか食いつなげいただとしても、後期開発品のラインナップは貧弱であり、その先の成長の道筋が描けません。

一方のシャイアーは、創業以来、患者が少ない希少病の治療薬に集中したユニークな会社です。

シャイアーの強みは、競争相手が少なく比較的高い利益が見込める希少疾患治療薬で新薬候補品を多く抱えています。

シャイアーが得意とする希少疾患は、患者数は少なくても、治療が困難で新薬に対する患者のニーズが強い現状があります。

シャイアーは、血友病や注意欠陥・多動性障害(ADHD)の治療薬など40種類の薬品を手がけ、100カ国以上で販売しており、17年12月期の純利益は約43億ドル(4600億円)と、武田薬品を上回る高収益会社です。

製薬業界の情報サイト「Answers News」の記事『2017年製薬会社世界ランキング(速報版)』(上記)によると、ドル換算の売上高は武田薬品が18位で、シャイアーが19位です。

武田薬品のシャイアー買収が実現すれば、日本の製薬企業としては初めて世界のトップ10入り(9位)を果たします。

国内最大手の武田薬品にとって、はるか遠くにあったメガファーマへの仲間入りという悲願達成となります。

武田薬品のウェバー社長は、シャイアー買収により「単純合算で売上高は2倍、利益水準は3倍になる」と強気の構えです。

武田薬品のシャイアー買収に伴うデメリットは?

シャイアー買収に伴う急増する借入金の重荷に、武田薬品が耐えることができるのかと危惧する声も強いです。

株価市場関係者は、「買収価格が高すぎ、武田の財務内容が大幅に悪化する」と懸念しています。

武田薬品はこの10年で、累計3兆円近い大型買収を行い、今回のシャイアー買収では、資金調達面で相当な無理をすることになります。

シャイアー買収には、買収額約7兆円のうち44%強となる現金約3兆円が必要となり、武田薬品は三井住友銀行など主要取引行と各行1兆円規模の借り入れに関し調整が必要になります。

現在の有利子負債は武田薬品が1兆円、シャイアーが2兆円であり、これに3兆円が加わると、買収後の新会社の有利子負債は6兆円に膨らいます。

かつて、無借金経営で名を馳せた武田薬品としては、大きな賭けになるのではないかと懸念の声もあります。

株式希薄化への懸念や巨額買収に伴う将来の不透明さを主因に、買収報道後の武田薬品の株価は下がり続けています。

2018年1月10日の6693円に対して、2018年6月は4300~4500円を推移しています。

2019年11月22日の武田薬品の株価は4500円です。

武田薬品のウェバー社長のシャイアー買収の思惑は?

英製薬大手グラクソ・スミスクラインの幹部だったウェバー氏を14年6月、当時の武田薬品の長谷川閑史社長(現相談役)がスカウトしました。

長谷川氏は買収した海外企業の立て直しを含め、ウェバー氏にしがらみにとらわれない大胆な経営改革を期待しました。

ウェバー氏は年間10億円の報酬を受け取っているとも報道されており、少なくともまだ高額な報酬に見合った実績を上げているとはいえないでしょう。

株主に経営手腕を示し、武田薬品の成長を確固たるものにするために、たとえ財務リスクが大きくてもシャイアーの買収を進めているという声も多く、そうした強い焦りがウェバー氏になかったといえるのかという懸念の声があるのも事実です。

もちろん、このかってないシャイアー買収という大型買収を推し進めるには、今までの常識にとらわれない強いリーダシップが必要であり、大きく舵をとったウェバー氏の本当の評価については、今後の行方を見守る必要があると思います。

武田薬品がシャイアー買収に伴い大阪の本社ビルを売却?

武田薬品工業は、創業地の大阪市内にある本社ビルの売却を検討していると2018年7月7日されました。

武田薬品はアイルランド製薬大手シャイアーを約7兆円で買収することで合意しており、財務の悪化が懸念されており、創業の地の資産も聖域なく効率化を進めていく姿勢が顕著なものになりました。

武田薬品の本社機能は東京に移りましたが、今でも登記上の本社がある「武田御堂筋ビル」の土地と建物が売却の対象となります。

年内に武田薬品の大阪本社の売却先を決める方針で、武田薬品周辺のビルなどを含む売却額は600億円程度になる見通しです。

昨年、武田薬品の子会社だった和光純薬工業(現富士フイルム和光純薬)の株式を売却する等、資産売却を通じた財務の効率化を進めています。

なお、武田薬品の大阪本社ビル売却後も、賃貸で使用し続けるとみられています。

武田薬品のシャイヤー社買収の考察は?

シャイアー社買収を目指す武田製薬は、当面の日本の製薬業界の動きの目玉となることは間違いないでしょう。

武田薬品のシャイアー買収が失敗すれば、市場の安心感から株価が急騰する期待もあり、一方逆に成功すれば、製薬業界の次の盟主の地位を狙っているアステラス製薬、第一三共などの動向も注目されます。

2018年4月からの薬価改定に加えて、来年から始まる薬価改定の隔年から毎年実施への変更など、製薬業界は難しい時代を迎えています。

国内市場の成長が期待しにくいとされる中で、シャイアー買収で海外に活路を見出そうとした日本の製薬業界をリードしてきた武田薬品の大きな“賭け”。

日本の製薬業界のこれからの方向性及び株式市場、あるいはトップマネジメントの施策論等、あらゆる視点において目の離せない“賭け”になるでしょう。

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